2026.10.17
一宮市をはじめとする尾張地域の婚活事情
尾張地域の婚活をめぐる環境
尾張地域は、名古屋市に近い都市部と、住宅地や工業地域、農地などが広がる地域が隣り合っています。一宮市、春日井市、小牧市、江南市、稲沢市、北名古屋市など、自治体ごとに生活圏や産業の特徴は異なりますが、名古屋方面へ通勤・通学する人も多く、日常の行動範囲が市町村の境界を越えやすい地域です。
この環境は、婚活にとって出会いの選択肢を広げる一方で、出会いの場に足を運ばなければ関係が始まりにくいという面もあります。勤務先と自宅の往復が生活の中心になったり、休日を趣味や休息に使ったりすれば、自然に新しい相手と知り合う機会は限られます。職場の同僚や友人を通じた紹介も、以前と同じように誰にでも期待できるものではありません。地域に多くの人が暮らしていることと、自分に合った相手と知り合えることは、必ずしも同じではないのです。
一宮市では、市の婚活支援事業「いち婚」がイベントやセミナーを案内しています。2026年度の企画には、18歳から39歳を対象とする交流イベントや、オンラインで参加できる婚活入門セミナーが掲載されています。イベントによっては、男性に市内在住・在勤・在学の条件を設ける一方、女性は独身であることを条件とするなど、参加要件が異なります。自治体の支援事業は、地域の中で出会いのきっかけをつくるとともに、婚活を始める前の情報収集や相談にも接点を提供しています。一宮市「婚活支援事業」、いち婚イベントポータル
小牧市も結婚支援に取り組み、結婚相談、婚活イベント、ライフデザインセミナー、結婚新生活支援補助金などを案内しています。出会いの機会を設けるだけでなく、結婚後の暮らしや生活設計、新生活にかかる費用にも目を向けている点が特徴です。婚活をしている人にとっては、「誰と出会うか」だけでなく、「結婚したらどこで暮らすか」「仕事や家計をどう組み立てるか」といった現実的な課題も大きいため、出会いから結婚生活までをつなぐ支援には意味があります。小牧市「結婚支援」
愛知県には、県内の出会い支援情報をまとめる「あいこんナビ」や、結婚を希望する人を支える「あいち結婚サポートセンター(あいマリ)」もあります。一つの市のイベントだけでなく、県域の支援情報も選択肢に入れれば、住んでいる市や勤務先の所在地にとらわれず、自分に合う活動を探しやすくなります。婚活サービスは、自治体主催の交流会、相談窓口、民間の結婚相談所、マッチングアプリなど多様です。それぞれ参加者の層や費用、紹介の仕組み、本人確認の方法が異なるため、目的と生活スタイルに合わせて選ぶことが重要です。
尾張地域の統計から見えること
愛知県の2024年の婚姻件数は32,250組で、前年より491組増えました。人口千人当たりの婚姻率は4.5で、全国の4.0を上回っています。県内の二次医療圏別では、名古屋・尾張中部医療圏の婚姻率が5.2と最も高くなりました。平均初婚年齢は、夫が30.9歳、妻が29.2歳です。愛知県「2024年人口動態統計」
この数値から、尾張地域では結婚する人が多い、あるいは婚活が容易だと単純に結論づけることはできません。婚姻率は地域の人口構成や転入・転出などにも影響され、医療圏の範囲も自治体の境界と完全に一致するわけではありません。また、婚姻件数の増加は一年間の変化を示すもので、長期的な結婚のしやすさや、個々人が希望する相手と出会える確率を表す指標ではありません。
一方で、愛知県全体の婚姻率が全国平均を上回り、名古屋・尾張中部圏が県内で高いというデータは、都市部に近い尾張地域の人口集積や移動の活発さと関連している可能性があります。近隣に複数の市があり、通勤・買い物・余暇の行動範囲が広いことは、出会いの対象を広げる条件の一つです。ただし、その選択肢を実際の出会いにつなげるには、本人の希望に合う場を選び、継続して参加する工夫が必要です。
現代人の結婚観はどう変わったか
2026年9月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した第17回出生動向基本調査は、2025年に実施された全国調査です。18~34歳の未婚者のうち、「いずれ結婚するつもり」と回答した人は男性75.1%、女性77.8%となり、前回調査の男性81.4%、女性84.3%から低下しました。「一生結婚するつもりはない」とする未婚者は男女とも2割を超えています。ただし、その回答をした人のうち約4割は、考えが変わって将来結婚を希望する可能性があると答えています。国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査」
この結果は、若い世代が一律に結婚を拒んでいるという意味ではありません。結婚を望む人は依然として多い一方、「誰もがいつか結婚するもの」という考えは弱まり、結婚しない選択も以前より現実的なものになっています。本人が結婚を望むかどうか、いつ考えるか、どんな関係を望むかは、一人ひとり異なります。婚活を始める時期にも、周囲と比べて早い・遅いという基準を当てはめにくくなっています。
結婚への期待も変化しています。第17回調査では、結婚に利点があると考える人の割合が低下しました。「子どもや家族を持てる」「精神的な安らぎが得られる」「経済的に余裕ができる」といった利点への評価は減少する一方、「愛情を感じる人と暮らせる」は増えています。結婚を社会的な標準や生活の安定策として見るより、好きな相手と暮らす関係として捉える傾向がうかがえます。結婚によって得られるものだけでなく、家事や育児の負担、時間やお金の制約、仕事への影響を現実的に考える人が増えていることも、こうした変化の背景にあると考えられます。
また、未婚者の3人に1人は異性との交際を望まないと回答しています。交際相手がいる人の割合は男性19.6%、女性27.8%でした。交際に関心を持たない理由は人それぞれですが、趣味や仕事、自分の時間を大切にしたい人もいれば、過去の経験や人間関係への不安から距離を置いている人もいます。結婚を考える人にとっても、「まず恋愛をして、自然に結婚へ進む」という一本道だけが選択肢ではなく、結婚相談所やマッチングサービスを使って、結婚への希望を確認しながら関係を築く方法が広がっています。
出会い方にも変化があります。夫婦調査では、職場や友人を通じた出会いが減る一方、マッチングアプリなどを通じて知り合った夫婦は20.2%となり、前回の11.0%から増えました。オンラインの出会いは、普段の生活圏では接点のない人と知り合える利点があります。尾張地域のように通勤や生活圏が広い場所では、居住地や勤務先の条件を調整しながら相手を探せることも便利です。他方で、プロフィールだけでは分からない価値観や生活習慣を、実際の会話を通じて確かめる必要があります。オンラインでも対面でも、相手を急いで判断せず、安心できる場所と方法でやりとりする姿勢が欠かせません。
「結婚したいが、今は決められない」理由
結婚を望んでいても、すぐに踏み出せない人は少なくありません。第17回調査では、結婚したい未婚者が独身でいる理由として、25歳以上では「適当な相手にまだめぐり会わない」が最多でした。これは、結婚意欲がないというより、希望に合う相手との出会いがない、または出会っても結婚を判断できる関係に至っていない人がいることを示しています。
その「希望に合う相手」の条件も、単純な年齢や年収だけではありません。仕事を続けられるか、住む場所をどうするか、家事をどう分担するか、子どもを希望するか、親との関係をどう考えるかなど、生活の具体的な部分が重要になります。愛知県内でも、名古屋方面への通勤を続けたい人、地元に住み続けたい人、結婚を機に住み替えたい人では、相手に求める条件が異なるでしょう。婚活では、条件を増やすだけでなく、自分にとって譲れない点と、話し合いで調整できる点を整理しておくことが、出会いを関係につなげる助けになります。
経済面も大切な課題です。住居費、食費、保険、教育費など、結婚後に必要となる支出を想像すると、収入や雇用の安定が気になるのは自然なことです。調査では、夫婦が理想の数の子どもを持たない理由として、「子育てにお金がかかる」「育児の心理的・肉体的負担が大きい」が挙げられています。結婚することと子どもを持つことを別々に考える人も増えており、「結婚したら子どもを持つべき」という考えへの支持は低下しています。結婚の希望を聞く際に、子どもを持つかどうかまで当然のこととして決めつけず、本人の希望を確かめることが大切です。
働き方や家族のあり方も変わっています。第17回調査では、女性のライフコースの理想像として、男女とも「仕事と子育てを両立する」選択が多くなっています。2020~24年に第1子を出産した妻の就業継続率は80.5%に上昇し、夫が日常的に育児をする割合も2020年以降に子どもを持った夫婦で5割を超えました。結婚後も共働きを続けたい人にとっては、家事・育児を誰がどれだけ担うのか、仕事の繁忙期をどう支え合うのかを、交際中から話せる関係が重要になります。
さらに、法律婚を唯一の家族の形としない考え方も広がっています。一宮市のパートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度は、同性のパートナーに加え、婚姻制度を利用できない、または利用しづらい事情を抱える事実婚の人も対象としています。この制度自体に婚姻や相続などの法的効力はありませんが、自治体が多様なパートナー関係を認識し、日常生活上の困りごとに配慮する取り組みの一つです。一宮市「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」
尾張地域で婚活を進めるときの視点
尾張地域で婚活をする場合、住んでいる市だけに対象を限定せず、通勤・通学先や休日の行動範囲も含めて出会いの場を考えると、選択肢が広がります。自治体のイベントは、地域で暮らす人と知り合いやすく、参加費や内容が比較的分かりやすいのが利点です。県の相談窓口やオンラインセミナーは、婚活の進め方を知りたい人や、いきなり交際を前提とした場に行くことに不安がある人にも利用しやすいでしょう。民間サービスやアプリを利用する場合は、費用や本人確認、個人情報の扱い、退会方法などを確認して、自分が納得できるものを選ぶことが大切です。
活動を始める前に、「結婚したいか」という問いだけでなく、「どのような暮らしをしたいか」を考えてみることも役に立ちます。仕事を続けるのか、住む地域はどこがよいか、休日をどう過ごしたいか、家事やお金をどう分担したいか。こうした希望を言葉にしておくと、相手の条件を探すだけでなく、お互いの生活をすり合わせられるかを確かめやすくなります。希望がまだ定まっていない場合は、婚活セミナーや相談窓口で考えを整理するところから始めてもよいでしょう。
現代の結婚は、年齢や周囲の期待に合わせて決めるものから、本人が望む生活や関係を確かめて選ぶものへと変わっています。結婚を望む人にとっては、出会いの機会を増やすだけでなく、自分の希望を相手に伝え、相手の希望も尊重しながら生活の見通しを話し合うことが欠かせません。結婚を望まない人や、まだ決めていない人にとっても、その選択を尊重されることが重要です。
一宮市を含む尾張地域では、自治体の婚活イベント、相談支援、県の情報サービス、オンラインの出会いなど、婚活の入口は複数あります。地域の婚姻統計には比較的高い数値も見られますが、それだけで個人の出会いやすさは決まりません。大切なのは、結婚を急かすのではなく、本人が望むかたちで人と出会い、安心して関係を築ける環境を整えることです。地域の支援と多様な出会い方を活用しながら、それぞれが自分の生活に合った選択をしていくことが、これからの尾張地域の婚活に求められています。


